ごあいさつ
東京大学医学部附属病院は歴史的には国内施設としては最も早い時期に当たる1964年に腎移植を開始しました。1996年に生体肝移植、2002年に脳死肝移植、2006年に心移植、そして2015年には肺移植を順次開始しました。令和元年度には心・肺・肝移植の総数は国公立大学病院の中で最多となったため、定時診療の枠を超えて多くの診療科や部門の協力を必要とする臓器移植医療をシステマティックに進めていく目的から、従来の臓器移植医療部を改組して令和2年度に現在の臓器移植医療センターが設置されました。
臓器移植は、あらゆる既存の内科的あるいは外科的治療によっても救命や機能回復が難しい疾患を有する患者さんに福音を与える最後の砦と呼ぶべき治療です。東大病院臓器移植医療センターは、臓器移植が唯一の治療手段である患者さんお一人お一人を助けるため、尊い意思を示された臓器提供者の負託に応えることを常に肝に銘じながら、司令塔として移植チームおよび手術部・麻酔科・看護部・集中治療スタッフなどの関連部署間の連携を迅速に行っています。
当センターには1名の専任教員と各臓器移植を担当する診療科(心臓外科・移植外科・呼吸器外科・泌尿器科)のメンバーが所属し、支援部門としてレシピエントコーディネーターを務める複数の看護師が所属しています。各臓器担当科では、豊かな移植経験に基づくクリニカルクエスチョンから生まれた課題に対する研究を行い、国内外での高い評価を得ると同時に移植治療の成績の向上にフィードバックしています。また、移植医療のさらなる普及のために医師・医療スタッフ・医学生を対象とした移植医療シンポジウムを毎年開催しております。
臓器移植を必要とする数多くの患者さんが笑顔の日常を取り戻すためには、善意の臓器提供がさらに増加して移植医療を身近な治療として定着させる必要があります。東大病院臓器移植医療センターでは患者さんとともに歩み、よりよい治療を多くの方々に提供できるよう一同弛まぬ努力をしたいと思います。
東京大学医学部附属病院 臓器移植医療センター
センター長
小野 稔 (心臓外科 教授)