トップページ > 疾患 > 腎不全外科

腎不全外科


1. 腎移植

1)生体腎移植

 生体腎移植では健康な親族(6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族)から腎臓を提供して頂き、移植手術を行います。非血縁者からの腎移植は行っていません。実際には以下のような手順で移植を行います。

 腎提供者が片方の腎臓を摘出されても健康に問題がないこと、受腎者、腎提供者ともに感染症や癌がないことが前提となります。
 また、腎提供者は、周囲から腎臓の提供を強制されるようなことがあってはなりませんので、腎移植を希望された経緯について詳しくお聞きします。
 受腎者、腎提供者の血液型が異なっても移植を受けて頂くことは医学的に可能です。

 外来にて全身状態をチェックし、血液検査、レントゲン検査など一般的な術前検査を行います。HLA検査などの組織適合性検査も行います。受腎者は手術の数日~数週間前、腎提供者は1日~数日前に入院していただき最終チェックを行います。

● 治療の実際

 手術は全身麻酔で行われます。腎提供者から腹腔鏡手術で腎臓を摘出し、受腎者の腸骨窩に移植します。手術時間は腎提供者で4時間程度、受腎者で5時間程度です。術後は1~2日で歩行が可能です。腎提供者は術後7日程で退院可能になります。受腎者は術後免疫抑制剤の投与が必要になり、薬の調整などで退院まで1~2ヶ月程度を要します。

  当院の治療成績

2)献腎移植

 手術を受けることに問題がないかどうか、透析施設の主治医の先生とご相談ください。心不全・重症糖尿病・感染症などを合併しているときは、手術が受けられないことがあります。

 外来で全身状態をチェックし、血液検査・レントゲン検査など一般的な術前検査を行います。

 臓器移植ネットワークに献腎移植希望者として登録します。このためネットワーク指定の施設で組織適合性検査を行って頂きます。

 登録が完了すると、待機期間となります。献腎の発生はいつあるかわかりません。また、献腎発生の連絡があったときには、すぐに手術を受けるか否かの決断をしなければなりません。普段からご家族などと緊急入院・緊急手術についてご相談しておいてください。

● 治療の実際

 献腎の発生後、腎移植を受ける意思のある方に緊急入院していただきます。入院から手術までは通常5日以内です。手術は全身麻酔で行い5時間程度を要します。術後は1~2日で歩行可能となります。術後免疫抑制剤の投与が必要になります。薬の調整などで、退院までに1~2ヶ月程度を要します。

拡大して見る

2. 血液透析

 血液透析は、透析療法のうち、透析器で血液を浄化する治療です。普通の静脈は血流が少ないため、血液透析に必要な血流量が取り出せません。そのため、血流の豊富な動脈から一部を静脈に流し、透析に必要な血流が確保できる静脈を作成します。これを内シャントと呼びます。

 外来にて全身状態のチェックをし、血液検査、レントゲン検査など一般的な術前検査を行います。手術の前日に入院して頂きます。

● 治療の実際

 手術は局所麻酔で行われます。手首や肘付近の皮膚を切開し、静脈と動脈を露出します。動脈と静脈に小切開を加えて血管縫合糸で吻合します。手術時間は1~2時間程度です。手術当日から飲水可能です。手術翌日から退院可能です。手術2日後でシャワー浴可能です。ボールを用いた運動で血管の発達を促します。血液透析目的に血管を穿刺できるのは2週間程度必要です。透析が必要になった時点で腎臓内科に入院し、血液透析を開始します。安定して透析を行えるようになったら退院し、近医で血液透析を継続してもらいます。

拡大して見る

拡大して見る

3. 腹膜透析

 腹膜透析は、透析液を腹腔内に注入して血液を浄化する治療です。腹腔内にカテーテル(腹膜透析カテーテル)を留置し、そのカテーテルを通じて透析液を注入します。透析液を、腹腔内に一定時間貯留しておくと過剰な水分や不要な老廃物が滲みだしてきますので、その後に透析液を排出します。

 外来にて全身状態をチェックし、血液検査、レントゲン検査など一般的な術前検査を行います。手術の1~数日前に入院して頂きます。

● 治療の実際

 腎臓内科に入院し、腹膜透析の指導を受けます。全身麻酔下に、下腹部を5cm程度切開しカテーテルを留置します。中継点2cmと出口部0.5cmを作成しカテーテルを皮膚から体外に出します。当院ではカテーテルを膀胱と腹壁に固定していますので、他の方法に比べてカテーテルのはね上がりが起きにくい利点があります(文献 Kume H. et al., Peritoneal fixation prevents dislocation of Tenckhoff catheter. Perit Dial Int. 2011; 31: 694-7.)。手術時間は通常2時間程度です。翌日から歩行可能です。数日後からカテーテルを使用して腹膜透析を行います。自宅でできるよう練習してから退院になります。

拡大して見る